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東京地評機関紙「TOKYOはたらく仲間」連載
「相談の窓・オルグの現場から」 (出版労連、住田治人)
労働相談担当者として (6)
◆今年四月一日から改正労働基準法が施行されました。月六〇時間を超える時間外労働の割増賃金率を五〇%以上に引き上げるなど時間外労働の削減と有給休暇の時間単位取得を導入して年休を有効活用させるための改正としています。
◆何年か前の相談ですが、ある編集プロダクションの雇用契約書を見てビックリ。始業朝一〇時、終業夜一〇時、休憩一時間となっています。実働一一時間です。タイムカードを見てさらにビックリ!毎日深夜まで残業。徹夜で朝まで仕事をして、仮眠もなく翌日の勤務も稀ではありませんでした。
◆ただちに団体交渉。会社は団体交渉に弁護士を同席させましたが、弁護士も「社長、これはまずいね」と。就業規則の是正と、未払い残業代の支払いを勝ち取りました。しかし、その後も労働時間の実態はなかなか変わりませんでした。
◆今回の法の改正の主旨は、労働時間の短縮と有給休暇の取得向上のようです。そもそも、過労死ラインが月八〇時間以上の残業。それに近い六〇時間超の残業が五〇%の割増賃金を支払えばOKということに危うさを感じます。長時間労働をさせること自体を禁止する。有給休暇は時間単位でなく、一日丸々休んで明日への活力を養う。労働組合は、そんな本来の姿を求めたいものです。
◆「パソコンがない時代はもっと暇だったのに。」そんな声が聞こえてきます。新自由主義経済の中で、労働者は競争させられ、安価な労働力をと叩かれてきました。残業代を勝ち取ることともに私たちが求めるのは、人間らしい生活と労働ではないのでしょうか。健康で文化的な最低限度の生活を営むために、労働組合に一人ひとりの力を結集しましょう。
(2010/06/15号)
労働相談担当者として (5)
◆出版労連への労働相談で、経営危機・倒産と並んで相談が多いのが解雇です。中でも、仕事ができない、能力がない、適正がない、ミスが多いなど業務上の「落ち度」を理由とする解雇が多くみられます。
◆出版社でよくある解雇理由は「誤字・脱字(誤植)が多い」というものです。一冊の本を作る場合、通常は二〜三回校正をします。その中で一回は担当編集者ではなく、他者が校正することが一般的です。しかし、小さな出版社や、しめきり間際の雑誌では、コストや時間の関係で担当編集者のみの校正で済ませてしますことがあります。ミスを起こさないためにダブルチェックの体制をつくらなかった会社の責任は明らかです。
◆ある出版社で、ハイクラスな旅行雑誌を創刊するために社員を採用しました。しかし、三カ月後に解雇通知がなされました。最初は解雇理由を一切通知されませんでした。その後、通知された理由は、「仕事ができない」「経歴を確認したら、格安ツアーを扱う旅行代理店に勤務していた」とのこと。実際には、広告が集まらず新雑誌の創刊ができなくなったことが理由のようですが、会社都合ではなく、労働者自身に責任を転嫁しようとするこのような解雇は許せません。
◆労働契約法にあるとおり「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」解雇は無効となります。懲戒解雇であれば、就業規則に懲戒についてどのように記載されているか、普通解雇であれば、解雇となった問題の程度や重さを検討することになります。まだまだ、労働者を使い捨てる酷い企業が少なからずあります。自らの生活を守るためにも労働者は賢くならなければ。
(2010/05/15号)
労働相談担当者として (4)
◆昨年の出版業の倒産件数は七二件と一九九二年の六七件を上回り過去最多となりました(東京商工リサーチ)。従業員数五人未満の企業が六割以上と小規模企業の倒産が増大しています。出版労連の労働相談件数を見ても、倒産・経営問題一〇件、賃金未払い四七件と経営危機を背景とする相談が断トツです。
◆多くの中小企業では決算書は開示されていません。しかし、社内にいれば情報収集できることはたくさんあります。追加融資を頻繁に要請した。メインバンクが変わった。親会社から役員が来た。知らない人物が会社に出入りするようになった。手形をジャンプした。そんな兆候を見逃さない事が大切です。
◆労働者はお人好しです。会社をつぶさないようにするのならと、親から借金をして運転資金を提供した、生命保険を担保に借金をして会社に提供した、ガン保険の保険金を貸した。これらは実際にあった事例です。当然倒産後には労働債権とはならず、どの事例も一般債権として回収することができませんでした。
◆未払い賃金の立替払い制度も上限金額があります。退職金と定期賃金以外は立替払いの対象になりませんから、携帯電話代などは経費として立替の対象にはなりませんでした。
◆解雇争議などと違い倒産争議の場合、自主再建など一部の事例を除いて復職先がありません。これまでの事例を見ても「もっと早く相談に来れば」というのが圧倒的です。早期に対応すれば、倒産が避けられたかは検証のしようがありませんが、少なくとも時期を遅らせることができたとか、回収できる労働債権を増やせたのではといった思いがあります。いつも残念な思いでいっぱいになります。
(2010/04/15号)
労働相談担当者として (3)
◆今年も桜の便りが聞こえる季節がやってきます。今年の大学新卒者の就職内定率は一二月一日現在で七三・一%と対前年比マイナス七・四ポイント(厚労省・文科省調べ)。高卒者にいたっては六八・一%と深刻です。
◆労働相談窓口から見ると企業の新規採用について懸念することがあります。従来二〜三カ月程度だった試用期間が六カ月〜1年に長期化する傾向にあること。さらに、一年間は有期雇用であったり、酷い場合は正規社員に応募したにもかかわらず請負契約なら採用するといわれたケースがあることなどです。
◆正社員を募集しながら、有期契約や請負契約で働かせる。まさに「詐欺」といってもいいでしょう。また、請負契約といいながら、タイムカードで時間管理をし、内線電話番号表に名前があり、更に昼休みの電話当番に名前がある。さらに、お茶くみ当番までさせられているといった実態です。あり得ないことです。
◆内定取り消しも許せませんが、試用期間終了に伴う解雇も問題です。とりあえず働かせてみたが、気に入らないからやめさせる。こんな酷いことが許されるわけがありません。当然のことですが試用期間といえども雇用契約が成立しているわけですから、どんな理由でも自由に解雇していいということはありません。客観的で筋の通る理由がなければ解雇することはできません。
◆また、試用期間は残業代や休日手当・深夜手当の支払いや、健康保険・厚生年金、労働保険の加入も正社員と同様でなければなりません。試用期間を途中で延長するといわれた場合も要注意です。
◆新規採用者・試用期間中でも、労働者としての権利が守られることは当然のことです。
(2010/03/15号)
労働相談担当者として (2)
◆出版産業では、多くの職場で長時間労働が常態化しています。週刊・月刊を問わず雑誌職場では、しめきり間際には徹夜で仕事をする状況が多く見られます。書籍職場でもほぼ同様です。長時間労働だけでなく、経験や職能に関係なく、著者とのやりとりなど担当者にほぼすべての責任・権限が持たされてしまうというストレスの多い仕事となっています。このような状況を背景に、ここ一〇年、メンタルヘルス不全の労働相談が激増しています。
◆四〇代の男性は、二〇数年担当した編集職から営業に不当な配転命令。「地獄の訓練」と呼ばれる宿泊研修に参加中体調が悪くなりました。診断はうつが原因の高血圧症。会社はさらに、営業から倉庫に配転。賃金を半分以下にしました。地裁で賃金支払いの仮処分の決定を取り、その後、交渉で原職復帰を勝ち取りました。
◆従業員八名の会社に勤務する二〇代の女性からの相談。不眠などで心療内科を受診したところ休職の必要があるとの診断。すぐに会社に話しをしたところ、社長は全社員の前で「病気のやつは会社を辞めろ」と怒鳴られたと相談に訪れました。団交で、厚労省からも、職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策・心身両面にわたる健康づくりについて様々な指針や通達が出ていることなどを紹介し理解を求めました。
◆これらは、すべて経営者にメンタルヘルス不全の知識がないことから、問題となった事例です。今年四月の改正労基法では残業手当割増が改正されますが、残業代が増えればいいということではなく、根本となる長時間労働根絶とメンタルヘルスについての理解を広める取り組みをさらにすすめる必要があります。
(2010/02/15号)
労働相談担当者として (1)
◆出版労連で最初に個人加盟組合・ユニオン出版ネッツの結成が一九八七年。本格的に労働相談に取り組みだしたのはその頃からです。OB組合員が相談員として常駐体制をとったのが一九九三年。そして、専従者の私が労働相談担当となるのが一九九七年です。この間労働相談件数は年間五〇件〜八〇件で推移しています。相談担当として一二年間に記録したノートは六三冊となりました。今年度からは、新設した労働相談室で労働相談員・補助員を育成するための労働相談実務研修会を月一回担当しています。
◆さて、労働相談は単純に労使間のトラブルを解決すればいいというものではありません。近年増加してきたメンタルヘルス不全や生活保護申請、ときには自己破産。さらに再就職のあっせんや職能・技能教育まで広範な守備範囲となります。生活と労働に関するありとあらゆる場面にかかわることになります。
◆この間、とりくんできた労働相談で何を一番大切にしてきたか。また、行政機関や弁護士、社会保険労務士が行う相談とどこが違うのかを考えてみました。
◆労働組合が行う労働相談活動は、ただ単に解雇撤回や、労働条件を回復・引き上げが目的ではないと思うのです。職と食を守る社会的な運動として取り組むということが大切なのではないのでしょうか。相談者が一人の労働者=社会人として労働組合に加入し、憲法や労働組合法で規定された労働者の権利を自覚し、職場や産業・社会を変える運動に参加する。そのスタートラインに立つことを支援することが労働相談だと考えます。相談員と相談者が同じ立場に立って共に成長する、そんな労働相談活動をめざしたいものです。
(2010/01/15号)

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