*6月30日、出版技術講座学校長の下村 昭夫氏(オーム社)による「インターネットで出版流通はどう変わるか」のフォローアップセミナーが開かれ、20名の参加者が、変わりゆく「出版流通』に熱心に耳を傾けていた。
下村氏は、委託制・再販制の現状、さまざまな出版流通の現状などに触れながら、現状の出版流通が、「雑誌や少品種・大量の新刊配本型の流通システム」であり、8%のマージンで日本全国に「安く、早く」送品する世界的にも最もすぐれた送品システムであることを強調。しかしながら、そのシステムが、同時に「一冊一冊の客注に敏速に対応しきれない構造的な欠陥を持っていることを指摘。ドイツのリブリ社の配送システムを紹介しながら、注文対応型のシステムの確立こそ、今日的テーマであることを強調、「須坂構想・出版VAN・出版サプライチェーンマネージメント」など業界の課題を紹介した。
後半では、インターネットを利用したサイバー書店の現状を分析、「ママゾン・コム」の登場以降の日本の代表的なサイバー書店として、「紀伊国屋書店、丸善、八重洲ブックセンター、三省堂、ブックサーブス」などの現状を報告した。
続いて、流通ビッグバンの引き金とも言える新しい最近のサイバー書店の現状を報告。トーハンなどの「eSーBOOKs」、日販の「本やタウン」、栗田の「本屋さん直行便」、図書館流通センターなどの「BOOK1」など15のサイバー書店の構想を紹介、インターネットと宅配を組み合わせた新しいサイバービジネスの最前線を紹介した。
最後に、ブックオフなどの新古書店の市場が本年度は、700億円にも達すること、また、街の本屋さんの中にも、「本のリサイクル運動」を提唱して、「古本」のバーゲンセールを「新本販売書店」も始めるなど、激動する出版流通の現状を分析した。
「インターネットと出版流通ビッグバン」
下村 昭夫
1.サイバー(電脳)書店の登場
アメリカでは、1995年に設立された世界最大のサイバー書店アマゾン・コムがわずか五年の間に7500人の従業員を抱える大企業に成長し、インターネット上に1900アイテムもの多様な商品と110万点もの書籍を扱っており、‘99年度の売上げは26億ドルと急成長しているが、最近のニュースによると、在庫数の増大・買収コストの増大と激しいディスカウント商法により、累積赤字も5億ドルと急速に経営状況を悪化させていると伝えられており、「サイバー書店」の未来も必ずしもバラ色ばかりではないようである。
アマゾン・コムでの書籍のオフ率は、ペーパー版で20%、ハード版で30%、ベストセラーもので40%となっている。
アマゾン・コムやダイイチのサイバー書店に刺激される形で、紀伊国屋書店、丸善、八重洲ブックセンター、三省堂などのサイバー書店が次々開設され、今では、中小の書店でも多くのシステムが開設されている。
インターネットを利用したサイバー書店の売上げは、‘99年度の実績で70億程度と見られており、最大の紀伊国屋書店の「BookWeb」は、2000年3月で会員数135000人(月5000人程度増加)、月商1億7000万円程度(年商20億程度)の売上げで、活況を呈していると伝えられる。
和書130万点、洋書200万件のデータベースを活用でき、書店在庫の書籍は、最短4日以内の配送、海外発注で10日〜4週間での入手となっている。宅配手数料は480円となっている。また、紀伊国屋では、この他に、店頭在庫の「ハイブッリド・サービス」(非会員制)なども運用しており、世界のオンライン書店なかでも、最も大きな売上げを確保している。
丸善インターネットショッピングのシステムは、和書140万点、洋書135万点のデータベースが利用でき、入会金は、無料、宅配手数料は、380円とのこと。
八重洲ブックセンターは、図書館流通センターの新刊データベースと書協のデータベース「Books」が利用でき、八重洲本店の40万点、150万冊の在庫を中心に客注に応じている。また、このサイトでは、インターネットカタログショッピングとして人気の「楽天市場」の電子モールにもアクセスできる。
同様なサーバー書店としては、三省堂の他、友隣堂、平安堂、旭屋書店、ジュンク堂など多くの書店で実施されており、ブッククラブ「本屋さん」などのサイバー書店も活躍している。
これらの書店在庫型のサイバー書店とは、別に1986年から、FAXとハガキによる客注の受注を開始し、宅配便ルートの先鞭を開いた版元・取次集配型のクロネコヤマトの「ブックサービス」も年商34億円と好調を伝えられており、そのうち、客注品の30%がインターネットを利用した注文とのことである。
また、「再販制」との関連で、問題視されてきた「ポイント制」を文教堂の「J-Book」や阪急電鉄の「ブックファースト」が実施し、また、公正取引委員会が「ポイント制」導入を歓迎する「報告書」を公表したこともあり、にわかに「ポイント制」が事実上の「値幅再販」として注目されている。
2.新しい出版流通と出版ビッグバン
書店在庫型のサイバー書店の好調に刺激されるかのように、このところ、新しいタイプのネット書店の構想が次々と発表され、にわかに「出版ビッグバン」の様相を呈してきた。
トーハンがソフトバンク、セブンイレブン、ヤフーなど4社と共同でインターネットを通じた「イー・ショッピング・ブックス=eS-Books」を設立、‘99年11月から、サービスを開始した。
データベースとしては、トーハンの「本の探検隊」を利用でき、購入可能な約10万点の商品の客注を宅配便を利用し、全国8000店のセブンイレブンの店頭で受け渡すというシステム、希望者には、自宅への宅配も受注している。開始3ヵ月で、会員数10万人を確保し、月商1億円に達するという。
なお、トーハンでは、川口に新たな客注センターを稼働させ、従来の取引ルートと別システムで、新条件による書店ルートの客注を強化する。
日販では、「本やタウン」を利用して、「単品管理」が可能な友隣堂、平安堂などの7書店と書店経由で、客注を受けてきたが、このシステムを2000年4月から、中小の50店舗に拡大、サテライト店も1000店舗に拡大した。また、5月より、「ウエブセンター」を稼働し、35万点の在庫を確保し、王子のPBセンターなどのバックアップを加え45万点の書籍の客注を24時間体制で、即日出荷する。
なお、ドイツのサイバー書店「BOLジャパン」が日販と提携、6月28日、初の外資系サイバー書店が稼働した。
図書館流通センター、日経BP、アスクルなど7社は、日本最大のネット書店「BOOK1」を2000年7月から稼働、TRCの180万点のデータベースにアクセスでき、OA関連商品の即日配達の実績を持つアスクルの配送システムとヤマト運輸の配送システムを組み合わせ、東京・大阪圏では、「午前11時までの注文は夕方七時までに配送」、原則24時間以内の配送を実現するという。
これらの他にも、栗田出版販売の「本屋さん直行便」、三省堂の「ブックサイト三省堂」やJR東日本の「えきねっと」などの駅キヨスクでの商品受け渡し、中小版元の「版元ドットコム」、 専門書出版の「cbook24」、TS流通共同組合の「e−bos」など、インターネットを利用したさまざまな新しいシステムが2000年4月前後に一斉に稼働した。
長い間、「欲しい本が手に入らない」「客注品が遅い」といった読者からの要望に応えきれなかった「委託制・再販制」の下での「システム疲労」にやっと出版界が応え始めたともいえる。
しかし、インターネットを利用した出版流通は、まだ、全流通の1%程度であり、日本の本の70%は、依然「取次・書店ルート」という大動脈を流れており、その基本ルートの改善なしには、真の出版流通の「流通ビッグバン」もあり得ないといえる。