だれのために作るファッション雑誌なのか「―女性誌・ファッション誌の編集現場から― 」講義録 * 7月3日今年の「記念講演」は、元・文化出版局で、ファッション雑誌の最前線を歩んでこられた宮本やす子さん。「だれのために作るファッション雑誌なのか」と題して、四五年に及ぶ、「雑誌作りの技術と心」を、次世代の編集者たちに伝えてくれた。 「六〇年代のファッション誌はそれぞれに独自のスタイルがあり、オシャレの提案も手作りまたはオーダーメイードが中心でした。」 「七〇年代に入り『an・an』が創刊され、ファッション誌とショッピングが直接結びつき、働くことが当たり前になった若い女性たちが、自分の賃金で、オシャレを楽しむ時代がやってきたと言えます。BGやOLからキャリアウーマンと働く女性の呼び名が変わり、七七年には『MORE』が八一年には『With』が創刊されてゆきます。」 「八〇年代に入ると、消費者時代を反映して、雑誌の中身も高級カタログ化してきます。そして編集現場も、売れる雑誌作りから、広告が入る雑誌作りへと変化してきます。ブランド品とのタイアップ企画が優先され、スタイリストやフリーランスの活躍なしには雑誌が作れなくなってゆくのもこの時代からです。」 「九〇年代に入ると、売れ筋にどの雑誌もわっと飛びつき、今まで手ごたえのあった切り口を繰り返すようになり、どの雑誌も似たり寄ったりの内容が目立ち、誌名を隠せば、区別がつかない女性誌がたくさん雑誌売り場に並ぶようになります。」 「一誌で数十万部の読者を有し、億単位の広告料金を動かすファッション誌。七〇年代から八〇年代の隆盛期に見た夢をもう一度とばかりに追及の手を緩めないばかりか、後を追いかけ、柳の下のどじょうを狙う雑誌が後をたちません。」 「ファッション業界と密着した雑誌づくりやバブルの発想は、今も読者に強い影響を与えています。」 「私は、こんな時代だからこそ、今、改めて、読者も作り手も求めている女性誌・ファッション誌とは、何かということを考えてゆきたいと思っています。その雑誌を作ることが、誇りであり、喜びである編集現場でありたいと願っています。」 「いま、国会では、個人情報保護法案や有事関連法案が上程され、余談の許されない状況が生まれています。マスメディアの息の根が止められてしまうほど、重要な法案といえます。私もジャーナリスト会議の会員として、この法案の成立に歯止めを掛けたいと運動に加わっています。雑誌を作る編集者の皆さんが、時代に敏感であって欲しいと願っています。」 四〇年に及ぶ女性誌・ファッション誌の編集現場からのリポートは、同時代を生きる若い編集者の心に響く、多くの教訓に満ちた講演であった。 (この記録は、2002年7月3日「第22回出版技術講座記念講演」での記録をまとめてものです)
◎ 「記念講演」の受講生の感想 * 「今まで読者としてうすうす感じていたファッション誌にまつわる問題点をとてもわかりやすく御説明していただき、大変興味深かった。しかし同時に、先が見えなくなっているファッション誌の作り手、また、そうして作られた雑誌を買い、その情報に惑わされている読者の悪循環を思うと悲しくなってきしまった。最後に、広い視野と志を持ってとり組むことの大切さを話されたので、救われた思いがした。」(日本評論社 高松 夕佳) * 「読者のための紙面づくりが難しくなってきた現在だということがよく分かった。宮本さんのお話は聞きやすくためになった。また、ファッション誌の裏側の話も知ることが出来てよかった。」(日本教文社 稲田 佳子) 以下、「第22回出版技術講座」の受講生の感想集をお届けする。 ビデオ「本づくりこれだけは」の感想 * 「ビデオはだいぶ前のものだと伺いましたが、普段やっている編集過程を確認しながら、一連の作業を見ることができ、役立ちました。今まであいまいにしか理解していなかった点がよく分かるようになるのではないかと今後の講義が楽しみです。(金原出版 佐々木 瞳) 第一講座「出版の基礎知識」の感想 * 「現在、出版社に入って3年目となるが、編集部門でなく洋書仕入の仕事をしているので、日常業務とは異なる編集のレクチャを受けるのは非常に刺激的だった。1〜2年後に編集に異動する予定なので、ここで得た知識を活かせればと思う。また、販売ルートの話は現在の仕事とも特に密接に関わる話だったので興味深かった。(医学書院 山中 邦人) 第二講座「本の製作1」の感想 * 「上製本と並製本の違いについて、これまではハードカバーだけが上製本だと思い込んでいたが、今回の講義で正すことが出来てよかった。また、ビデオで触れられていた改丁と改ページについても丁寧にご説明いただいてよくわかりました。」(日本評論社 高松 夕佳) * 「細かく詳しく説明していただけて、とてもわかりやすかった。普段何気なく読んでいる本にも数多くのルールがあるからこそ、本は読みやすくなっているのであり、そこには、編集者の苦労があることを感じた。」(有斐閣 奥山 裕美) 第三講座 「本の製作2」の感想 * 「2回連続同じ先生だと、親しみがわく。とてもわかりやすく勉強になりました。逆目の本は面白かった。やっちゃいけないといわれていることを実際やるとどうなるかということは興味がわく。」 (筑摩書房 松永 晃子) * 「普段、当然のように見ていた書籍がこれほど細かく原稿指定されていた上で完成したものだということを知り驚きました。原稿は、誤りのないように、その内容にも注意を払わなくてはならないけれど、その一方で、計画的に勧めなければならない。両方に責任を持たなくてはならない編集の作業は、つくづく大変だなあ、と思いました。」(三修社 名田 瑞希) 第四講座「雑誌の作り方」の感想 * 「現在、胃や腸など消化器の内視鏡画像をふんだんに使った医学雑誌を担当しており、今日の講義の話(特にカラーの話)は大変勉強になりました。カラー校正は難しく印刷所の人によく分かるようにこちらの希望を伝えなければならないのですね。」(医学書院 飯村 祐二) * 「トラブル事件の紹介が非常におもしろく勉強になった。雑誌・本を作る上で、編集者が注意しなければいけない点は一人で、抱えきれないほど多いと思うので、こういった実際に起こった例を知っておくと、少しでもミスを未然に防ぐことができると思った。」 (大成出版社 篠岡 奈緒子) 第五講座「本のデザイン」の感想 * 『本屋に行くと本当に多くの本、派手な本が出ており、その中で自分の会社の本を買ってもらうためには、装丁にも充分気を使う必要がある。と思った。また、本文のデザインをデザイナーの方がされると、素人がするのは違うな、と感じました。』 (有斐閣 林 直弘) * 『今日の講義を聞くまで、デザインはアーティスティックな仕事、ひらめきが必要とされる仕事と思っていたが、実際は、書体一つ、紙一枚を本の雰囲気を伝えるためにきっちり選ばねばならない地道な仕事だと思った。』(医学書院 染谷 美有紀) 第六講義「校正の基礎知識」の感想 * 「具体例が多く、わかりやすかったです。注意すべきことがたくさんあって、今までの考えが少し甘かったなと思いました。また、辞書が全てでないというのも、今まで考えたことがなく、注意したいなと思いました。」(暮しの手帖社 関野 司) 第七講義「雑誌のレイアウト」の感想 * 「視覚イメージをデザインするというと、単に色とか形の問題だと思っていたが、そうではなくて文字をいかに読みやすくするかが重要だということを学ぶことができた。読者の立場で、編集することを忘れないようにしたいものだ。」(群羊社 村上 真梨) * 「可読性についての講義は非常に興味深く、大変勉強になった。レイアウト(雑誌)について、日頃、さほど変化に富んだものをしていないので、楽しく聞きました。」 (中山書店 矢野間 聡子) * 「組版の読みやすさについての話がためになった。組版によって、読む速さ、疲れ具合が大きく異なるのが、興味深く、気をつけるようしなければならないと思った。(日本教文社 青田 辰也) 第八講座「DTP入門」の感想 * 「イラストレータやフォトショップ、クォークエクスプレスのシミュレーションがとてもわかりやすかったです。私の担当している雑誌は、割付用紙に図版のサイズを計算して割付けたり、印刷所の方がデスクを回ってくださり、校正を往来する従来タイプの作業をしています。近い将来には、DTPに移行するでしょうから、コンピュータに慣れておいた方がいいなと思いました。」(医学書院 松田 直子) 「工場見学」の感想 * 「東京の真ん中にこんなに大きな工場がありビックリしました。浮世絵の時代から、現代の歴史の変遷を感じました。また、若い人たちが多い職場の中で、年長の方も時々見受けられ、インクのかおりが、実にいいもんですネ。ありがとうございました。」 (鈴木書店 佐藤 呈司) 第九講座「著作権の基礎知識」の感想 * 「いつもついて回るものでありながら、学んだり、知る機会がほとんどなかったので、今日の講義は大変勉強になった。今後は、インターネットの情報などマルティメディアの著作権がだんだんと問題になってくると思います。多くのたとえ話などで説明いただきまして、大変わかりやすかったです。」(外山 裕子) * 「著作権と著作物の違いをちゃんと覚えておきたい。小説は、文章の力で、主人公の姿を想像する自由が読者にはある。また想像力を育てる力を持つ。しかし、絵になっていないから、本の中の主人公には著作権はない。マンガは絵になっているから、キャラクタの著作権がある。もっともな話だが小説の方が損をしているような気がする。」(日本教文社 稲田 佳子) * 「知らない事ばかりで、テキストを目を皿のようにして見ていないとついていけなくなりました。“キャンディキャンディは小学生のときに『なかよし』で読んでいたのでなつかしかったです。でも裁判で争うなんて、夢が壊れてしまいました。」(角川財団 大串 美津子)
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