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人と紙と自然の調和を目指す技術と心


「北越製紙・関東工場」見学記 講義録

 6月8日(土)、「出版技術講座」の受講生を中心に16名が、市川市の江戸川沿いにある北越製紙・関東工場の見学に訪れた。
 北越製紙の創立は、1907年(明治40年)。現在は、主として、チップ材から化学パルプを作る新潟工場、発祥の地である長岡工場と、ここ関東工場の三つが主力工場とのこと。
 関東工場では、主として、一般の書籍用紙を作る長網式多筒型抄紙機と板紙を作る抄紙機が二系統ある。各工場とも、積極的に環境問題に取り組み、塩素ガスを使わない無塩素漂白方式を世界に先駆け採用、環境に優しい天然ガス発電も採用しているとのこと。
 また、北越製紙では、「古紙の利用に積極的に取り組み、人と紙と自然の調和のために、日夜、努力しています。」「ユーザーが望む製品開発とともに、環境への負荷を最小限に抑えるミニマム・インパクトをテーゼに生産に励んでいます」と会社紹介をしたいただいた営業部・課長代理の郷智行さんと事務部長の矢澤秀男さんは語ります。
 続いて、業務担当課長の中島純二さんが、「紙のできるまで」を説明。その後、二班分かれて工場を見学。
 「紙の原料には、繊維の長い松・杉などの針葉樹と繊維の短いユーカリ、ブナなどの広葉樹の両方があり、現在では、バガス・ケナフなどの非木材紙の利用とともに、古紙の活用も重要なパルプの供給材です。」
 「パルプの製造法には。石臼ですりつぶしてパルプ分を取り出す機械パルプと苛性ソーダなどの薬品で煮てパルプを取り出す化学パルプの二種類があります。」
「漂白方法には、塩素ガスを使用する従来法と二酸化塩素を使用する無塩素漂白法の二種類がありますが、塩素法は有機塩素化合物やクロロホルム発生などの問題があり、北越製紙では無塩素方式を採用しています。」
 「抄造方法は、パルプにさまざまな添加材を加え、大量の水でかき混ぜた原料をワイヤーと呼ばれるプラスチックの網に流し込み脱水します。次の工程では、ロールと毛布で更に水を搾り取り、ドライヤー工程で、湿った紙を蒸気の入った熱い筒で乾燥させます。乾燥した紙をカレンダー工程へ送り、紙の表面を平らにします。そして、コーターへ送られた紙は、表面を塗料で加工され、巻き取られます。その後、さまざまな用途に合わせ、カッターで裁断されて紙は製品として完成します。」
 「古紙の利用で、一番難しいのは、印刷された墨を抜く脱墨技術です。古紙の供給材には、上質古紙、新聞古紙、雑誌古紙がありますが、上質古紙は供給源が限られます。皆さんの一番、興味のある雑誌古紙ですが、背固めの糊やさまざまな材質の付録、とりわけ、CD-ROMなどは、古紙の再生には、難敵となり、その不純物を取り除くことが良質の再生紙を作る上で、欠かせない技術となります。」
 「古紙だけでは、だんだん繊維が細ってしまいますので、適当量のフレッシュ・パルプを加えることで、強度を保っています。」「パルプ材は、消費されることで森林が活性化され、積極的な森林経営で森林面積は、増加しています。」
 「日本の古紙の利用率は、約57%で、世界のトップレベルにありますが、強度の問題があり、パルプのリサイクルは、三〜五回が限度です。」
 「一般の洋紙は単層紙、板紙は積層紙です。この工場で生産されている板紙は、7層になっており、中央部分には低質の再生パルプが使われ、その両方から、三層に亘ってパルプ材が重ねられますが、一番外側には、フレッシュ・パルプが加えられ、強度とともに、製品の質も保たれています。」
  「紙は生き物であり、環境の条件により変化します。」「紙の特徴に合わせた使用をしないと問題が発生します。」「紙は要望に応じて、いろいろな機能をつけることが出来ます。」
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 古紙の材料として、積み上げられた雑誌の前で、案内役を勤めてくれた工務部長の富樫純さんが、ある見学者の言葉として、伝えてくれた「古紙は都会の森林です。」ということばが心に響いた。(文責・下村 昭夫)