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新しい出版とディジタル文化の創生を

◎「デジタルコンテンツと著作権活用術―夢と現実と編集者の課題」 講義録 *10月20日(土)

 10月20日(土)、アピオ大阪3F会議室にて、「第10回関西出版技術講座」が行われた。
 この講座は、出版技術講座20周年記念して、東京・大阪で、同時期に開催されたセミナーで、関西講座には、50名が参加。久しぶりの盛況であった。
 出版技術講座学校長の下村昭夫氏が、「知らないと損するデジタルコンテンツと著作権活用術−夢と現実と編集者の課題」と題し、前半は、「出版におけるインターネットの利用とデジタルコンテンツのさまざまな課題について」また、後半は、「デジタル化時代の著作権の基礎知識について」講演した。
 以下、その講演骨子をご紹介する。

 一. デジタルコンテンツの現状と課題
 1.出版社とインターネット
 現在、出版社のうち、ホームページを開設しているのは、1500社程度とみられる。出版科学研究所の調査資料によると、1999年度に新刊書を発行した出版数は、3700社となっており、このうち、5点以上の新刊を発行した出版社数は、1500社となっているから、ホームページを開設している出版社総数とほぼ一致している。
 ホームページの内容としては、「書籍データーベース、商品受注システム、自社案内、情報サービス、書店情報、リンク集」などとなっており、サービスの内容も「新刊情報、コラム、講演記録、ダウ ンロードサービス、プレゼントコーナー」など多種多様であるが、一部のWebサイトを除いて、今のところ、個々のホームページは魅力に乏しい、見応えのあるホームページつくりは、これからの課題といえる。
 インターネットを利用したサイバー書店も紀伊国屋書店、八重洲ブックセンター、丸善、三省堂書店などの書店在庫型に加え、eS-Books、bk1、BOLなどの取次在庫型あるいはブックサービスなどの集配型とさまざまである。
 サイバー書店全体の売り上げは、100億円程度と伝えられるが、話題に呼んだ割には、現状は厳しく、今のところ、リアル書店を中心とした出版販売流通の補完的役割を果たしているに過ぎない。
 出版社独自のインターネット利用の通販受注を実施している出版社数は、650社程度とみられる。このうち、一定額以上の購入に対して、送料サービスを実施している出版社もある。
 また、「BOOKS-ID.NET」のように文藝春秋社など大手の出版社を中心に共同の受注サイトを作る新しい動きも現れてきた。

 2.さまざまなデジタルコンテンツ
 テキスト形式の電子情報の配信としては、「電子書斎パピレス」や「青空文庫」が有名であるが、新しい動きとしては、光文社など電子文庫出版社会8社の「電子文庫パブリ」やイーブックイニシアティブジャッパンが配信を開始した「電子書籍e-book」などがある。
 辞典情報のインターネット配信としては、ソニーなどの電子ブック閲覧室「私の仕事部屋」や平凡社の百科事典情報を提供する日立S&Sの「ネットで百科@Home」などに加え、「三省堂ウエブディクショナリー」のように、iモードを利用したサイトが急増している.
 漫画の配信としては、富士ゼロックスの「まんがの国」や集英社の「imodeジャンプ」などがある.
 また、音声の配信としては、新潮社の「サウンドシェルフ」などがあり、村上龍氏などの作家さんのWebサイトや20000誌が登録されている無料のメールマガジン「まぐまぐ」などの動きも活発である。

 二. 揺らぎの中の著作権
 1.知的財産権と著作物の概念
 著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸・学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されており、著作物の例示として「言語、音楽、舞踏・無言劇、美術、建築、地図、図形、映画、写真」などがあげられていた。
 これに1985年(昭和60年)の改正で「プログラム」が追加されたことから、元々表現物≠対象にしていた著作物≠フ概念がどちらかといえば発明やアイデア≠ネどを保護してきた工業所有権法(特許法や実用新案法など)的性格も含むようになった。
 そして、1986年の改正で、データベースも情報の選択性*狽ヘ配列性∞検索性≠ネどに独自の創作性≠ェ認められれば、単なる編集著作物でなく、独自のデータベースの著作物≠ニして保護されることになった。
 マルチメディアの著作物とは、「文字、音声、静止画、動画などの多様な表現形態の情報を統合した伝達媒体またはその利用手段で、単なる受動的な利用でなく使用者の自由意思で、情報の選択、加工、編集等ができる双方向性を備えたもの」(著作権審議会の答申案)と定義されており、コンピュータソフトやデータベースの著作権の延長線上にある特異な著作物≠ニして立案される方向性にある(環境整備を急いではいるが、明確な法規制はまだない)。

 2.ゆらぎの時代の著作権
 1996年12月、WIPO(世界知的所有権機関)では、著作権に関するベルヌ条約を補強する新条約を採択した。その新条約によると、「コンピュータプログラムやデータベースの著作権の保護」「著作物の頒布やレンタルに関する著作者の許諾権の承認」「写真の著作物の保護期間の拡大」「コピー機能解除装置の販売禁止」「著作権に関するデータベースの改ざんの禁止」などが採択された。
 この採択を受け、写真の著作権が「公表後50年」から「死後50年」(国際的には死後70年)へと改正された他、ネットワーク時代への対応を含んだ次のような「改正著作権法」が1998年1月から施行された。
 「ネットワークへの接続行為について、実演家及びレコード製作者に許諾権(著作隣接権)を認める」「著作物をネットワークに接続する行為を『送信』に含め、著作権が及ぶこととする」「同一のLAN(企業内情報通信網)内でのコンピュータプログラムの送信を『送信』の保護に含め、著作権が及ぶこととする」「無線によるインタラクティブ送信について新たな規定を設け、概念上、有線との区別は行わない」などとなっており、「公衆送信権並びに送信可能化権」という新しい概念が著作権法に規定された。
 その後、1999年10月改正では、プログラムのコピープロテクション解除装置の製造・販売を禁止することなどが決められた。
 このように著作物も著作権の概念も、ゆらぎの時代を迎えているといえるが、ゆらぎの時代≠セからこそ、著作権を中心とする知的財産権法や昨今の話題の「ビジネスモデル特許」などの基本をしっかり理解する必要があるといえる。

 3.ビジネスモデル特許の衝撃
 インターネットを利用した世界最大のサーバー書店アマゾン・コムの成功は、それなりの衝撃であったが、2000年3月、アマゾン・コムの放った二つのビジネスモデル特許の衝撃は、ネットビジネスの関係者を震え上がらすのに、十分な衝撃となった。
 一つは、多くのオンラインショッピングで、今では、当たり前に使用されている「cookie」と呼ばれるワンクリック・オーダーシステムである。 一度購入実績のある顧客に対しては、顧客の届出先や請求先などを保存しておき、一回のクリックで、購入手続きが完了するシステムである。
 開設以来、わずか5年で、世界一のサイバー書店に成長したアマゾン・コムの商法は、価格サービスだけではなく、顧客ニーズに合った新刊書を推薦するリコメンド制など顧客に対する徹底した情報提供サービスが有名である。 そのビジネスの知恵と言える「ビジネスモデル」そのもので「特許」を取得し、1999年9月、アメリカNO2のバーンズ&ノーブルを特許侵害で訴えた。
 ママゾン・コムは、2000年2月、その第二弾ともいえるビジネスモデル特許を取得、ネットビジネス界を揺るがした。 その方法は、「アフィリエートシステム=提携プログラム」と呼ばれているもの。
 いわば、サイトのスペース貸しシステムのことで、 あるネットショッピングの運営者が、アマゾン・コムのサイトにリンクを張り、商品を紹介しておくと、その商品の売上げの一部を提携先のサイト運営者に支払うという仕組みである。 この手法も、ネットビジネスの世界では、広く使われている手法の一つである。
 日本でも、インターナショナルサイエンティフィック社が、1999年6月ビジネスモデル特許を獲得、2000年3月、「インターネット上でIDとパスワードを使い、コンテンツの販売やショッピングモールを運営している方は、弊社の特許に抵触します」というメールをインターネットプロパイダなどの事業者に送り、日本のネットビジネス業界を揺るがした。
 アメリカに続き、日本でも、「ビジネスモデル特許騒動」がいよいよ始まった。 しかし、このビジネスモデル特許は、日本の特許法に明確な概念がなく、アメリカでは、アマゾン・コムの行過ぎた「規制」に対し、不買運動すら起こっており、2001年2月には、アメリカの裁判所は、ワンクリック特許に関して、その特許性を疑問視する判断がなされ、プライスライン社とマイクロソフト社の「逆オークション特許」紛争も急速な“和解”で幕を綴じた。 また、日本でのインターナショナルサイエンス社の仮処分申請は、“特許実施の技術ではない”と、2000年12月に却下されている。
 なお、日本の特許庁は、2000年12月に「コンピュータ関連発明の審査基準」を公表し、混乱する「ビジネスモデル特許」に一定の方針を示した。

 4.デジタルコンテンツの問題点と課題
デジタルコンテンツの利点としては、「複製が簡単である.大量の配信が出来る.更新情報がすぐに作れる。検索性に富む」などさまざまあるが、その反面、「見やすい電子ビューワーがない.著作権上の問題がある.安定した課金システムが開発されていない」などと問題点も多い.
 また、昨今では、「コンピュータウイルスや不正アクセス・不正コピー」さらには「Web攻撃やハイテク犯罪」が多発しており、社会問題となっており、犯罪・セキュリティを巡る課題も多い.
 インターネット配信を巡る著作権法の改正、ビジネスモデル特許を巡るアメリカの動き、不正競争防止法の改正など法律上の新しい考え方と、風営法の改正以来、増加している有害情報の取り締まりの強化や「個人情報保護基本法」や「青少年社会対策基本法」制定の動きなど、インターネットと「言論・表現の自由」を巡る課題にも留意したい.

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 下村氏の講演は、第二テーマの「揺らぎの中の著作権」に入る前に「著作権クイズQ&A」を用いて、「著作権法の基礎知識」を解き明かす手法であった。後半の講演骨子は、講演では、触れることのできなかったテーマの補足を収録した。
 また、事前にメールで寄せられた、ネッツ関西の会員からの質問に対する回答「著作権と私たちの仕事」も教材の一部として用いられた。休憩時間にも、多くの質問が寄せられ、即答していただいた。
 なお、「著作権と私たちの仕事」の希望者は、メールでお申し込みください。
 (連絡先:argo@gol.com 千葉 潮)