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於:キャンパスプラザ京都
2003.1.5
日韓/韓日・歴史教育&平和教育を考える交流集会
記 録 集より

アンケートからみた韓国生徒たちの韓日現代史歴史認識
 〜「ほたるの墓」「GO」を見た韓国高校生たち〜
  報告者:崔 鉉三[チェ ヒョンサム](ソウル中央高等学校)


 【報告文とアンケート結果】および【口頭での報告】の二部になっています。



 1.現在の日本を考えるとき,私と生徒たちが悩む部分。

 韓日関係史を語るとき,特に現代史を教えようとするときぶつかる問題は日本「国家」と日本「国民」をどう区別すべきか,である。扶桑社の歴史教科書歪曲問題を契機に昨年来日本の市民団体や教師達と交流して,私は多くの衝撃を受けた。この人たちは太平洋戦争の韓国人被害者たちの賠償請求訴訟を支援しているし,戦争を煽る扶桑社教科書の不採択運動を全国的に展開していた。私はこの人たちから軍国主義を復活させようとする日本のイメージを見出すことは到底できなかった。かれらは戦争ではない平和を願っていて,平和共存の韓日関係を望んでいた。


 今まで私はこんな日本の人々に会ったことがなかった。私だけでなく韓国人の多くも同じだろうと思う。私たちが日本に対して思っていることはこんなことではないだろうか?


 前近代には,先進文化を日本に伝えてやったから私たちが彼らより先進文化を持っていたこと,近代には帝国主義侵略で植民地支配をこうむったことである。文化を伝えてくれた有難い国を侵略して支配するとはとんでもない話だ。それなのに日本はいまだに植民地支配を反省するどころか正当だったと主張し,さらに一歩進めて扶桑社教科書のような歪曲した歴史を記述する教科書すら作った。日本は悪い国だ。私たちも力を養って,いつの日かこんな日本に追いついてやるのだ。・・・


 といったような思いである。私も生徒たちもほとんどこれに似たような思いを持っていたのだが,そんな思いをひっくり返させることが起きた。


 日本の教科書を正す運動本部が主催した,韓日青少年歴史体験キャンプに私と生徒たちが参加した。このキャンプを通じて生徒たちは,日本人学生と交流しながら「日本人」についての偏見から目覚めていった。自分と同じように悩み,自分たちが日本について持っているのと同じ(好奇心)くらいに韓国の文化に関心を持っていた。生徒たちはわけがわからなくなってきた。自分は日本の漫画とアニメーションが好きだし,今度会った日本人の友だちもいい人だし,今までいい国じゃないと思っていた日本を好きになるべきなのか,とたずねる生徒もいた。そしてさらに驚くべきことは,日本の生徒たちは日本が太平洋戦争の被害者だと思っていることだった。


 生徒たちも私も,日本人と日本文化とその歴史についての勉強をあらためてする必要があると感じるようになった。なぜ,日本人は自分達を被害者と思うのか? なぜ,植民地支配によって韓国を発展させたと主張する日本の右派が引き続き日本を支配しているのか? なぜ,大韓民国は植民地支配を反省しない日本と国交を正常化したのか? なぜ日本と韓朝民主主義人民共和国はいまだに修交しないのか? なぜ,日本軍慰安婦ハルモニたちは毎週水曜日ごとに日本大使館前で示威を続けているのか? こうした問題を生徒たちとともに悩み,解決の糸口を見つけたいと思った。


 2.日本に対しての授業を通じて,学生たちに持たせたかった歴史認識。

 韓国の生徒たちは日本の帝国主義侵略の事実を学ぶと,帝国主義と覇権主義一般に対する批判意識を涵養したり,現在の日本を正しく理解したりするよりは,「被害者意識」を一層強くする。それがもとになって,現在の日本に対して強烈な民族意識を持つようになり,日本人たちが加害者であると同時に被害者であるとは考えたことがなかった。日本は常に我々を侵略した加害者であり,韓国は常に侵略をこうむった被害者だと認識された。


 私は生徒たちが現代の韓日関係を帝国主義日本の加害と植民地朝鮮の被害つまり国家と国家の対立から考えるのではなく,力と暴力を振りかざした帝国主義勢力と,平和共存を追及する平和勢力間の対立構図で新しく認識することを望んだ。過去から止揚すべきことは止揚し,さらに新たに育て上げるべきことを見つけることが出来なければならないからである。


 したがって,「日本」の全てを敵に回すのではなく,「同志としての日本人」に会うようにしたかった。理念としての韓国人と「大韓民国」ではなく,理念としての「国家」利益を「政権」の利益と関連させて考えるようにし,「普通」の国民の責任と義務を考える授業をしたかった。


 今韓国では米軍装甲車の「ヒョスン・ミソン事件」の裁判をめぐって,反米感情が最高に達している。我々にとって米国はいかなる存在なのか? 生徒たちは授業中に米国に関連する話が出るたびに興奮する。悪い国だと思っていた日本と,よい国だと思っていた米国をいまや違って考える必要性を生徒たちは感じているのである。日本の帝国主義を全世界的な帝国主義時代の問題としてとらえ,日本が加害者であったことには代わりはないにしても,加害者⇔被害者構図や道徳論では解決できない諸問題について掘り下げた検討が必要である。過去の日本の帝国主義と,現在の米国主導の覇権主義的な世界秩序はどこが違うのか?
 今後,韓国と米国,韓国と日本はどのようにして対等な関係を維持していけるのか?


 3.アンケートから見た学生たちの歴史認識。

 アニメ「ほたるの墓」を見て,普通の日本人は戦争の被害者か,加害者かという問題を考えるようにした。


●質問1.普通の日本人は太平洋戦争の被害者か?
 ○答1.日本人も戦争の被害者だと考える者。 68%
   −当時の日本政府と支配者層の責任をあげて,
    普通の人たちは被害者という立場 41%
   −戦争それ自体の暴力性を指摘して,誰もが被害者だという立場 27%
 ○答2.日本人は加害者だと答える者。 30%
 ○答3.わからない 2%


 1945年米国の大空襲を素材とした日本のアニメーション「ほたるの墓」は太平洋戦争を日本人の視覚から体験できる力があった。映像の力があまりに大きいので無批判に受容させる否定的な側面もあったが,反対にこの力を利用して固定観念を崩すのに利用するならば,教育的効果も発揮すると思う。少なくとも,日本人も戦争の犠牲者かもしれないと考えられる機会を提供できた。
 太平洋戦争の責任は誰にあるのか? 軍部の責任者たちか? 天皇か? 日本国民全体か?


●質問2.世界平和のために愛国という言葉を捨てよう,という主張に賛成か?
 ○答1.賛成する者。 27.5%
   行き過ぎた愛国が軍国主義を作り出した。
   互いに競争心なく,全世界が生きていけたらいい。
   国は個人によってできた共同体だ。国を愛する理由がない。
   世界平和が重要だ。
 ○答2.反対する者。 72.5%
   愛国は義務だ。
   国のために犠牲になるのは価値あることだ。
   国家がなければ秩序がなくなって混乱するだろう。
   わが国は無条件に愛し守らなければならない。
   愛国心がない国家は想像もできない。
   国家がなくなれば民族もなくなる。想像もできない。
   愛国と戦争は関係がない。
   戦争は国家間利害関係で起きる。
   愛国心がなければよその国に征服されてしまう。
   支配層が国を愛したなら戦争をなくすることができる。
   本当の愛国心は他の国も愛することだ。


 生徒たちは「国家の利益は即ち自分を含めた国家構成員全ての利益だ。」と考えた。生徒たちが愛国の対象として思い浮かべる国家は歴史的実態としての国家(権力)ではない。理念としての国家(わが国=祖国)だった。この生徒たちは一学期の修学旅行で光州事件の望月洞旧廟域を参拝して,暴力的な国家権力にとって犠牲となった無辜の市民たちに会ったのだが,「世界平和のために愛国という言葉を捨てよう,という主張に賛成するか?」の質問には72.5%が反対した。生徒たちの過度な国家主義志向をどう解きほぐすか?


●質問3.太平洋戦争での日本人犠牲者と韓国犠牲者は同じ戦争の被害者か?
 ○答1.同じ被害者だ。 44%
 ○答2.違う。 56%
   私たちは受動的に戦争に参与し,日本人たちは能動的に参与した。
   そして韓国人がより大きな被害を受けた。


 質問1では普通の日本人も戦争の被害者だという意見が68%だったのだが,質問3の日本人と韓国人の被害者を同じ次元で見るべきだという主張は44%だった。普通の日本人も戦争の被害者という点では同意するが,戦争を防げなかった日本国民の責任を強調する意見が24%である点が注目される。


●質問4.植民地支配と太平洋戦争の責任を問わず,韓米日反共軍事同盟と経済協力を強化した,米国の極東戦略をどう思うか?
 ○答1.正当だ。 38%
   共産主義を防ぐためにはよいことだ。我々の経済が発展するようになった。
 ○答2.問題がある。 62%
   米国政府は頭がよほどいいらしい。後ろで米国が全てを操って,日本や韓国はその操り人形の役をしているみたいだ。
   共産主義の拡大を防ぐのはよいことだが,日本の戦争責任者問わなかったのは間違いだ。


●質問5.朴正熙政権が国民の反対を武力で鎮圧して締結した韓日協定はよいことだったのか?
 ○答1.よいことだ。 55%
   そのときの5億ドルは今の1000億ドルにあたった。
   たとえ少し自尊心を傷つけたとしても,経済を発展させた。
   北韓より暮らしがよくなった。
 ○答2.まちがっていた。 44%
   目前の切迫した経済状況と政権の利益のために日本に引きずられた。
   だから多くの太平洋戦争被害者たちが補償を受けられなくなった。
   植民地支配に対する謝罪を受けない点はまちがいだ。カネのためにもっと大切な価値を放棄した。
   カネも取らなければならないし,反省もさせなければならなかった。
   被害者たちの個人請求権まで放棄して2回被害をこうむった。
   どっちみち韓日会談は米国の圧力で日本は経済支援をするしかなかったから,韓国政府は低姿勢で臨む必要はなかった。
 ○答3.わからない。1%


●質問6.1965年韓日基本関係条約と2002年朝日首脳のピョンヤン宣言の共通点と違いは何か?
 ○答1.共通点−
   両国の共同の利益を追求している。
   南北ともに経済困難を日本の助けで解決しようとしている。
 ○答2.差異点−
   北韓は日本の植民地支配について公式的な謝罪を受けた。
   日本は北韓のミサイルと核問題の解決のために経済支援を約束した。


●質問7.国家が太平洋戦争被害者たちの個人請求権までなくすることができるか?
 ○答1.できない。 82%
 ○答2.できる。 7%
 ○答3.わからない。 11%


●質問8.日本帝国主義たちによって犠牲になった朝鮮人犠牲者たちの人権と,北韓によって拉致された日本人たちの人権は,同じ次元の問題か?
 ○答1.そうだ。43%
 ○答2.違う。 56%
 ○答3、わからない。1% (別のクラス 54%,42%,4%)


●質問9.朝日修交が韓半島の平和にどんな影響を及ばすか?
 ○答1.肯定的な影響。60%
   北韓経済が良くなって,長期的にみて続一に役立つ。
 ○答2.否定的な影響。31%
   金正日政権を強化する結果をもたらす。
 ○答3.わからない。9%


●質問10.日本人たちの韓国人に対する差別意識と,韓国人と東南アジア労働者たちに対する差別意識を同じ次元の問題か?
 ○答1.そうだ。87%
 ○答2.違う。13%


●質問11.過去の歴史経験と反省が,未来の平和とどんな関連があるだろうか?
      韓国人と日本はどうすれば共存できるか?
 ○答1.日本がまず真っ当な謝罪と保障をしなければならない。41%
   在日同胞を差別しないようにしなければならない。
 ○答2.韓国と日本がともに相手に対する先入観と偏見をなくさなければならない。3%
 ○答3.理解の幅を広げるための経済・文化交流を活性化しよう。25%
   両国のマスコミで互いのよい点を知らせるようにし,両国の未婚男女のお見合いを推進しよう。
   両国関係を行き来する飛行機の値段を安くして,さかんに往来するようにしよう。


※ 映画「GO」を見て,質問したこと。(12〜15)


●質問12.在日朝鮮人少女にプロポーズしようとした日本少年はなぜ在日朝鮮人少年ジョンイルをナイフで刺したのか?
 ○答1.まちがえたように見える。でももっとふかく考えて見れば,日本人の意識の中には在日外国人は危ないという考えがあったからそうしたかもしれない。


●質問13.なぜ主人公のスギハラは友達のジョンイルの復讐はしないと言ったか?
 ○答1.しかえしをしたとしても損ばかりするはずだから。25%
 ○答2.しかえしをしたとしても,民族差別がなくなることはないから。75%


●質問14.韓国国籍の人が日本名で生活するのをどう思うか?
 ○答1.今,自分がすんでいる国が日本だから生活しやすいから。成功した後で名前をかえてもいいからスギハラと言う名前をつかってもいい。民族学校に通ったとしても,韓国語も下手だし,歴史意識もない。だから中身は日本人と同じだから韓国式の名前か日本式の名前かはあまり関係ないと思う。 65.5%
 ○答2.かまわない。3.5%
 ○答3.差別があったとしても韓国の名前をつかってのりこえよう。スギハラという日本名前をつかったとしても,日本人にはならない。31%


●質問15.映画を見た後「チョッパリ」という言葉を日本人に言いたいと思うか?
   ※ チョッパリ:韓国人が日本人を軽蔑するとき使う言葉。
 ○答1.我々が日本に支配された痛みがなくなったのではないから,
   「チョウセンジン」と言う言葉をいぜんとして使っているから使う。35.7%
 ○答2.使わない。64.3%
   日本人全体が悪いとは言えない。世界化が進んでいる時代だから敵対的な民族意識は危ない。「チョッパリ」と「チョウセンジン」とは両方も同じ人間だ。


●質問16.韓国人留学生リスヒョンさんはなぜ酔っ払いになった日本人を助けたか?
 ○答1.人間なら当たり前のことだと思うから。72.7%
 ○答2.韓日間の葛藤を解決するため。27.3%


●質問17.30業種の現場で働いている東南アジアから来た不法滞留者たちへどんな態度をとるか? 韓国人と同じような態度をとることに対してどう思うか?
 ○答1.自分の利益のために来たのだから同じ態度をとる必要はない。でも彼らの気持ちなどを考えて少しは(同じ態度をとる)しかしそれがもし私に損をさせることなら強く対応すべきだ。どこの国でも差別はある。85%
 ○答2.彼らも韓国人の労働者と同じく30業種の現場で働いているから経済発展のため努力しているから同じ待遇をすべきだ。我々が彼らに待遇してあげなければ,日本に在日(同胞)に対しての差別意識をなくせということを要求することができないから。30%
 ○答3.同じ待遇はできないとしても,人権は守るべきだ。35%


●質問18.在日韓国人・朝鮮人と中国の朝鮮族に二重国籍を認めることに賛成するか?
 ○答1.反対する。50%
   すんでいるところが違うから。
   韓国人として義務を果たしていないから。
   国籍は一つで十分だから。
 ○答2.賛成する。40.9%
   韓国人としての血筋を持っているから。
   韓国人としていろんな被害を受けたから。
   植民地の時代,独立運動家の子孫だから。
 ○答3.韓国人としての資質があれば認める。9.1%


●質問19.韓国政府は在日韓国人・朝鮮人になにをすべきか?
 ○答
 韓日協定のとき,もらったおかげで経済発展をしたから今は日本に住んでいる韓国人朝鮮人に保障をはらわなきゃならない。と共に在日韓国人・朝鮮人の地位の向上をはかるための関心が必要だ。


 4.生徒たちの考えを分析してみれば次のようだ。

1)米国の圧力について否定的な立場が多かった。東アジアにおける米国の役割に否定的な意見が多かったことは,最近の「ヒョスン・ミソン事件」と不平等な駐韓米軍駐屯軍協定(SOFA)の影響が大きく作用した。共産主義の破滅と資本主義に関与しようとした米国を自由陣営の保護者ではなくて,米国の覇権を守ろうとする外交戦略だったと評価した。さらには,米国が日本の戦争責任を問うことなく,日本中心の戦後体制を考えたのは間違いだったと指摘した。


 こうした生徒たちの意見に対して,私は次のような意見を付け加えた。日本は請求権交渉過程で国際社会での威信回復と急速な経済成長のために過去の歴史を排除しようとし,植民地支配と侵略戦争について正しく清算しなかった。その結果,南北韓をはじめアジア韓国から厳しい批判を受け,信頼関係を作るのに失敗した。結局日本との請求権交渉は,長い目で見れば失敗の歴史だといえる。


2)経済協力方式について肯定的に評価する意見が優勢だった。韓日協定で争点になった請求権問題が,植民地支配で発生した損害と解決ではなく,経済協力方式で処理されたことについて肯定する意見がやや多かった。朴正熙政権の経済発展に対する評価が僅かながら優位を占めたのは何にしても北緯よりは豊かに暮らしているじゃないか,と言う考えが作用しているようだ。南韓が北韓との経済競争で勝利するための経済発展の必要性と,朴正熙政権の輸出志向工業化戦略は避けられなかったと見る生徒が多かった。結果的に請求権問題は経済協力方式で処理されて,大きな問題はなかったと見る。もちろん否定的な評価も多かった。歴代の韓国の政権は植民地の鹿史を清算しようとする意向が弱く,朴正熙政権が被害者たちの個人請求権まで放棄することによって現在まで戦後補償問題が続いていると指摘してる。


 5.授業を終えて。

 授業を進めている間,日本ではマスコミが連日反北キャンペーンを続けているという記事と,在日朝鮮人学校の生徒たちが被害を受けていると言う記事が韓国で報道された。北韓と戦争してでも拉致問題を解決すべきだと主張する日本の極右派の主張は,多くのことを考えさせた。金大中政府の太陽政策に対する評価が国内でも食い違っているが,日本の普通の人たちは北韓の軍事的脅威をどんな方法で解決するつもりなのか? 日本の極右派と米国のブッシュ政府が主張するように,北韓は悪の枢軸だから戦争をしてでもなくしてしまわなければならないと考えるか?


 韓国では安全保障の脅威を言い立てる反共イデオロギーが次第に弱まっている反面,日本ではいっそう強まっている現実をどう評価するか? 韓国と日本,さらには日本と南北韓の戦後関係はいまだに東アジア史の中で深刻かつ重要な課題だと確認するだけで,私も生徒も何ら解決策を提示できなかった。


 日本と韓国の歴史教科書の中からいくつかの歪曲事例を見つけ出して批判し,訂正を求める作業だけでは,韓日両国間で本当に歴史意識国家の中に皆がいて国家に反対する者などはいないと信じている状況下で,教師は何を教えるべきか? 全ての問題を国家の問題に還元させ,相手勢力を敵対的にのみ考える生徒たちはどこへ向かうのか?  


 6.日本の教師たちとともに議論したいこと。

1)歴史教育で平和の問題をどう扱うか? 韓国の歴史教育は平和に対して二重的な立場をとる。平和教育していることはしているのですけど,“分断”という状況の下で現場でなされている教育の内容はかなり反平和的だ。その一方,平和教育は被害者の立場のみ強調する傾向がある。お互いの差をどう乗り越えるか? 平和運動をしている日本人もいるが,悪い日本人と悪い韓国人,彼らが現在力をふるっているシステムのもとで平和と人権を呼びかけると言うことで解決できるか? 民族解放戦争と抵抗的次元のテーマは悪いのか? 民族主義と国家主義はいつも否定的な機能しかなかったのか?


2)正義・人道,国益との間で矛盾に直面してその葛藤を解決する過程を通して,自分の意見を持つようになる。その過程がなければ状況が変わると自分の意見もそれによって変わるおそれがある。正義と人道に対しての問題も自分の身近な人のことならば,関心を持って解決しようとするが,そうではないときはあまり関心を持たない。とくに相手が敵対的関係の人ならば,ぜんぜん知らないふりをしている傾向がある。


 韓国,また日本の生徒たちは太平洋戦争被害者と拉致された日本人,そして韓国の男の友達に殴られて死んだベトナムの女の人に対して人権問題をどう思うか? 日本の生徒たちは在日朝鮮・韓国人をどう思うか? とともに現代,現代史のいろんな問題を自分のものとして受け入れているのか? それに対して判断を生徒たちに持たせることは意味があることか?



【以上,報告文とアンケート結果】
  【以下,口頭での報告】



 口頭では次のように報告されました。
   ■韓国の報告者:崔 鉉三[チェ ヒョンサム](ソウル中央高等学校)

 資料が2つあります。アンケートの結果が出ているものが一つ。もう一つは報告文。


 アンケート質問1を見て下さい。私は,韓国の学生たちが,日本の学生のアジア太平洋戦争に対するイメージを確実に認識する必要があると思いました。韓国の学生たちは,日本人が戦争の被害者だということを一度も考えたことはありません。日本のアニメ「ホタルの墓」を見せました。多くの学生たちはそれを見ながら泣きました。そしてアンケートの質問の第一問をしてみました。予想どおり,日本人も戦争の被害者であるということを答えた学生が68%にのばりました。私が注目したいのは,1の2の結果です。日本人も戦争の被害者であるが,ならば戦争の加害者はだれなのかという質問で,学生たちは一般の日本の民衆と戦争を起こした日本の国家,政府を区別して考えることがわかりました。


 次に,日本はなぜ戦争を起こしたのか,また日本と韓国の関係はどういうものだったのかということに関する質問に対して,一方的に日本が加害者だという答えだったのですが,たぶん普通の日本の国民も戦争にでていて,死ぬことを恐れていたんでしょう。戦争の結果,日本の国民もかなりの苦労を経験したわけです。なぜ日本の多くの国民は軍人として国家のために戦ったのか。おそらくそれは戦争を通じて何らかの利益を得ようとしている,だから国民を利用して利益を得ようとしている支配クラスのせいじゃないか。おそらくそれは国家の利益と自分の利益が同じだと考えていたからではないか。


 第2問になって,世界平和のために「愛国」という言葉を捨てればどうかという質問をしてみました。しかし韓国の学生たちは,私の考えとはまったく違って,それに反対する者が72.5%にのぼりました。ここには出てこないのですが,戦争が起こったら国家のために戦争に兵隊としてでていきますと思っている者は手をあげてみてと言ってみたら,誰もいなかったんです。だから私は,「愛国」という言葉を捨てろということに賛成する学生が100%になるんじやないかと思いました。「愛国」という言葉をどうして最後まで捨てられないのかと考えてみたら,たぶん自分と家族と国家,それが一枚岩のようになって頭の中で考えられているのではないかと思っています。私が教えている教え子たちは,五月の修学旅行の時に,光州の民主化運動の時に犠牲になった市民の墓地に参拝して来ました。国家権力によって市民が犠牲にさせられた現場を見てきた学生なんです。しかしそういう経験をしたにもかかわらず,まだまだ国家,民族,そして自分は一つだったんです。


 質問3になります。国民ではなく,人権をもっている個人としての考えを新たにする必要があると思いました。そこで最近問題になっている北朝鮮による日本人拉致事件の犠牲者の問題と,日本による植民地時代の強制連行の犠牲者に関して質問してみました。その2つが同じものか違うものかと聞いてみたら,学生たちは56%が違うものだと答えました。朝鮮人犠牲者の数が日本人拉致者の数を上回るというのが理由だったんです。そしたら人権というものが人数によって決められるのか。


 質問10.韓国人の東南アジア出身の労働者に対する差別と,日本人の在日韓国・朝鮮人に対する差別は同じものかと聞きました。同じものだと答えた学生が87%でした。なぜこういう差異が生まれたのか。韓国人の学生たちにおいて,在日朝鮮・韓国人の問題また東南アジア出身の労働者の問題は,まだまだ自分から遠い問題にとどまっています。しかし植民地時代を通じて行われた朝鮮人犠牲者に関する物語は,今までの歴史教育の中でかなり教えられてきて刻印された部分なのです。彼らの頭の中に刻印されている「私たちは被害者だ」という考え方が,人権という問題に関しては目を覚ませないようにしています。


 質問15になります。映画「GO」を見せてこのアンケートをしてみました。学生たちの64.3パーセントは日本人の朝鮮人に対する卑称としての「(朝)鮮人」に対応する「チョッパリ」という言葉を使わないと言っていました。その理由はあらゆる日本人が悪いわけではない,みな同じ人間ではないか。といぅ意見もあったのですが,一方で35.7パーセントの学生は日本から受けた被害があまりにも大きいから,また在日朝鮮人に対する差別がまだ残っているので,僕らは「チョッパリ」と言い続けます,と答えました。


 韓国人の学生と一緒に勉強しながら,恐ろしさということを強く感じました。自分がよくわからない相手に対する考えというのは不安につながります。自分と異なるところがあるから,不安と偏見をもつようになります。この恐ろしさというのは恐怖につながります。そういう相手とは会話ができません。たぶんその恐ろしさ,恐怖,偏見というのが相手に対する暴力につながるのではないかと思います。それは国家と民族が異なっている相手に対して特にそうなると思います。その問題を皆様と話したかったのです。
 ありがとうございました。




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