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   出版労連の構成と出版情報関連ユニオンの位置

……ユニオンの組織拡大は,ロングテールのさらなるロング化……
Written by 京都の飛んでる二人組 (2007.7.26)

[1] amazonの「ロングテール」からの思いつき

(1) ネットワークにおける「ロングテール」

 @amazonの書籍の売上

・横軸に書名をとり売上額の多い順に並べ,縦軸に売上額をとって,分布をみると,どうなるだろうか。従来の書店では,20%の売れる本(これを「ヘッド」という)で80%の売上を上げていて,売れない80%の本(これを「テール」という)のほとんどは,書店の棚には置かれなかった。ところが,amazonでは,すべての本を並べることによって,書店にはほとんど置かれない下位80%の書籍,すなわち右方向に長く伸びる「テール」の商品で,相当の売上を上げている。これまでは稼ぎにならないとされた「テール」でも,稼げるモデルとして,「ロングテール」が注目されるようになった。

・ネットワークによって,「テール」の部分にかけるコストが著しく低減され,情報を広く提供することによってアクセスできる人が出てきて,「ロングテール」が収益源となった。

 AWebやブログ

・現在,インターネットの世界では,ブログを中心にサイトの数が著しくふえている。Yahoo!とかのポータルサイトなど大きな20%のサイトで,総アクセス数の80%をしめるといった具合に(数字は異なるにしろ),ヘッドの部分の拡大はすすんでいるが,サイトの数は増加し続けている。横軸に情報発信サイトをアクセス数の多い順に並べ,縦軸にアクセス数をおいた分布のグラフを作ると,右の方向にかなり長い「ロングテール」が形成されてきた。「テールのロング化」が進んだことにより,ここの「ロングテール」を対象とした「ロングテールビジネス」が脚光を浴び,amazonが成功したのに続いて,いろいろなビジネス・モデルが登場している。一つ一つは小規模,マイナーでも,それが多数集まることによって,ビジネスの対象となるほどの価値を持つようになっているというわけ。

・こうした「ロングテール」の主要な特色は,どんなことだろうか。それは,多種,多様,玉石混淆,ニッチ(隙間),非主流,反主流,少数派,辺境,域外,被差別,おたくなどの言葉が当てはまることが多い。

(2) 集団の構成要素と集団の特色

 @出版

・日本の出版社を,従業員規模順にX軸に並べ,Y軸に従業員(売上額)をとって,グラフを作ると,おそらく,20%の数の出版社で,80%の従業員数(売上額)をしめるといった(数字は異なるにしろ)特色が見えるだろう。「自然現象や社会現象は決して平均的ではなく,ばらつきや偏りが存在し,それを集約すると一部が全体に大きな影響を持っていることが多い」という現象である。

・と同時に,グラフは,右の方にずっと長く伸びていくだろう。出版の世界では,小零細出版社でも,本を出している限り,ある程度,存続が可能な状態になっている。それは,本が文化的な製品であり,他に代え難いものであること,出版社は印刷や製本を外注することによって一人でも経営できるといった理由による。出版が文化的な営みであることに,下位80%の出版社の存在意義がある。

 A放送,新聞,印刷

・同様に日本の放送局を見たらどうなるか。大小の放送局があるといっても,出版のように一人の放送局は存在しない。最近は地域の小FM局が増えているといっても,免許制のために数も限られているので,グラフが出版のように右の方向に伸びるということはない。ただし,関連の下請プロダクションまで並べると,一定の長さの「テール」が見られる。

・新聞社の場合は,業界紙などもあり,放送局の場合よりは右に伸びるだろうが,出版よりは「テール」は短い(右への伸びは少ない)と考えられる。

・印刷産業の場合は,ごく少数の巨大な「ヘッド」があって,その後に長い「テール」が続いているという構造になっている。出版の場合と共通性が大きいが,設備が必要な分,「テール」の長さでいえば,出版の方が長くなっている。

(3) 出版労連の組合員数,二つの見方

 @出版労連の単組別(組合別)組合員の分布

・横軸に組合員数の多い単組名(組合名)を順に並べ,縦軸に組合員数をとると,分布はどうなるだろうか。この場合,ユニオン,ネッツ,合同労組は,それぞれ一つの単組として扱うことにする。

・20%の数の単組(組合)で,80%の組合員数をしめるといった具合の(数字は異なるにしろ)状況が成立するだろうか。また,「テール」はどんな状況になるだろうか。

 A出版労連の職場別(企業別)組合員の分布

・単組名(組合名)ではなくて,職場名(企業名)を横軸とすると,分布はどうなるだろうか。この場合,ユニオンは職場別,ネッツは職場別または個人別,合同労組は分会別に並べることになる。上の場合と比べて,どちらが適切な見方になるだろうか。

・20%の数の単組(組合)で,80%の組合員数をしめるといった具合の(数字は異なるにしろ)状況が成立するだろうか。また,「テール」はどんな状況になるだろうか。



[2] 出版労連の構成とユニオンの特色

(数字は,2007年6〜7月の労連議案書,一般報告,ユニオン執行委員会のレジメなどによる。)
(1)出版労連の構成

・ユニオン,ネッツ,合同労組を除いた単組の分布をみると,最大単組(小学館労組)1つで,労連組合員の12%をしめる。組合員が70人以上いる20(4%)の組合(単組=職場)で,組合員数は3500人(60%)をしめる。分布上では,4%の単組が「ヘッド」の地位をしめている。この20の単組は賃金水準もかなり高いため,労連に納める会費は,労連全体の収入の60%を大きくこえる。

・つまり,分布上の「ヘッド」をなす少数の主要な単組が,組合員の大きな割合をしめていて,労連会費への寄与率もひじょうに高い。その結果,「ヘッド」をなす単組は,それに応じた発言権を有し,労連全体の方針にも影響力をもつと考えられる。

・また,小規模な出版社が多いのと同様に,小規模な組合もひじょうに多いので,「テール」は右の方向に長く伸びている。

(2) 出版労連の中でのユニオンの位置

 出版情報関連ユニオンは,大きな地位をしめる「ヘッド」の一部か,長い「テール」の一部なのか。

 @ユニオンは「ヘッド」の一部か

・縦軸を組合員数,横軸を組合名(ユニオン,ネッツ,合同を含む)として組合員の多い組合から順に並べていくと,小学館716,集英社(オブザーバー)636に続いて,ユニオン263,中央法規195,ネッツ181となり,ユニオンは大単組の仲間に入ったみたいに見える。はたして,労連組合員の分布の中で,東洋経済171,啓林館169,岩波167などをこえる「大単組」として,その分布の「ヘッド」の一部をなすような地位にあるのだろうか?

 A数字でみたユニオン

・労連の組合(単組=職場)数は合計で140あるが,ユニオンの組合員は150の職場にわたる。
・ユニオンでは,150の職場に260人の組合員がいる。
・組合員が5人以上いる職場は,6つ。しかも最大で12人。
 特定の職場の組合員がユニオンの中で中心的な地位をしめる余地は,まったくない。
・一人の組合員しかいない職場が,120 ある。
・公然化している組合員は,31職場の93人。
・そのうち,春闘などの要求を提出している職場は,13職場の55人。

 Bユニオンは,長い「テール」の一部をなしている

・上記の「数字で見たユニオン」の実態に合うように考えるために,縦軸を組合員数,横軸を組合名ではなくて職場名として組合員の多い職場から順に並べていくと,ユニオンは,はるか後方の12人のところに最初の名前(英知出版)が出てくる。続いて,10(ヴォーグ),9(銀行研修),8(CMC),7(文英堂),6(理工学社)となる。つまり,ユニオンの組合員のいる職場は,分布の「はるか後方のテール」を構成しているわけで,とうてい中央法規,東洋経済,啓林館,岩波などの大職場(大単組)には及ばない地点に位置づけられる。

・その上,ユニオンの場合,最小の1人職場が120もあるので,「テール」の最後尾に集中する

・以上の点から見て,「ユニオンは,ロングテールの最後尾をなす」と位置づけるのが,実態によく合うと考えられる。ユニオンを単組として扱うと,労連の全単組で140ほどになり,「テール」の長さはここまでになる。ところが,ユニオンを1単組として見ずに,150職場に分けて考えると,労連の全職場は290ほどとなり,「テール」の長さが2倍以上になる。ユニオンは,ロングテールの最後尾をなし,テールを伸ばしていると見ることができる。

・「数字で見たユニオン」を,よく整理してみると,次のようになる。

・ユニオンは,多数の職場の労働者をかき集めて(「テール」の80%の最後尾として)形成されている。
労連の単組(職場)数は合計で140,ユニオンの組合員は150の職場にわたる。
組合員の数が,職場の数に近くなっている。

・ユニオンを,労連の主要な部分(「ヘッド」をなす20%の対象)の一翼とみることは,実態にあわない。
ユニオンを単組とみなして,組合員数で評価することは,適切ではない。
それは,個人加盟労組の特性をつかまず,企業別組合の論理をもちこんでしまう道にもなる。
ユニオンの特性からみて,企業別組合の常識や経験は当てはまらないことが多い。

・個人加盟ユニオンの特性とは
・ユニオンは,企業(職場)が単位ではなくて,すべて個人が単位となっている。
・その個人も総じて経済力が小さく,社会的な地位が低い。
・不安定雇用,中小零細企業,下請け編集プロダクションなどの組合員,失業者がめずらしくない。
・こういう層が労働組合を必要としているのであって,今後こうした層がユニオンの中心になる。
    ユニオンの拡大のためには,こういう層に対してとくにアプローチしていく必要がある。
・労働組合に初めて接した人が多く,組織的活動の経験が少ない組合員が大半をしめる。
 (→だから,ユニオン内の賃金アンケートがなかなか集まらない。)
・企業別の大単組なら組織的な運営に習熟しているが,そうした組織的運営にやや未熟である。
(3) ユニオンの組織拡大の意味

 @何のための組織拡大か

・たとえば,労連方針どおりに,今年,ユニオンが500人になったら,その結果,どうなるのか,とりあえず想像してみると。
 1.ユニオン会費の増収,労連会費の増収。
  →専従体制の充実。広い事務所の確保。運動の活性化。収入が増えれば,何でも可能になる。

 2.人材(活動家)の増加。

 3.より多くの職場に,ユニオンの(出版産業の)ミニマム・スタンダード基準を広めていって,影響力を拡大できる。ユニオンの社会的地位の向上。

 4.低劣な労働条件の職場では,職場単位で組織拡大がすすむ可能性がある。そうした組織拡大がすすめば,職場における労働組合の地位が高まり,その結果,個別企業内の労働条件向上も展望できる。

 5.ユニオンの運動全般の活性化。公益的な運動の取り組みが前進。

 6.出版最賃など,出版産業における影響力,地位の向上。労連の運動の拡大。

 7.労働組合の基本的な機能(労働市場における弱者救済,人間らしい生活と労働)の維持,拡大。
   ↑ここに,個別企業における労働条件の向上は,ふくまれていない。
    労働法規の遵守,生命と健康の維持,ミニマムの労働条件の確保などが,ふくまれる。

 8.競争社会を拒否し,相互扶助と連帯が基軸のフラットな人間関係の社会が広がる。
・で,果たしてそのようになるだろうか?
 1.……NO! 零細小民がふえても,会費はたいした額にはならないのでは。
 2.……少しは期待したい。
 34.……期待できる。
 5.……期待したい。元気が出る組合員が増えるだろう。
 68.……さらに組織拡大がすすんだ将来に期待したい目標。

 A組織拡大の結果

・ユニオンが500人になったら,加入職場の数はかなり増えるだろうから,出版労連の「ロングテールのさらなるロング化」がいっそうすすむことになる。このような状況は,労連の構造を変えていくものであるが,考えてみれば,出版産業の構造をいっそう良く反映するような形になっていくに過ぎない。零細出版社といえども文化的な役割の中で生存できるように,一人職場の個人組合員がふえればふえるほど,彼らはユニオンの中で生きていく意味を実感できるようになるだろう。

・ユニオンの組織拡大は,組合員が500人になったところで,加入組合員の労働条件の向上にすぐに効果をもたらすものではない。企業別組合なら,企業内の組織率のアップが労働条件の向上につながっていくのとは,状況が異なる。ただ,数字の面では,組合員の自信につながるだろう。当面は,ユニオンの人材が増え,運動が活発化することを期待したい。

・労働市場の底辺に散在する多数の孤立した労働者を組織化して,ユニオンという集団にまとめていくには,従来の企業別組合型のやり方だけでは,難しい面がある。たとえば,企業別組合では,企業内ですぐに職場会を開けるとか,意思統一や交流の場を設定しやすいが,ユニオンではそんなことにも手間がかかる。

・新たに240人の組合員,200職場で組合員がふえたとして,その1割の20職場で団体交渉を開くとなると,団交団の編成,方針の意思統一など,これはたいへん。また,支部ミーティングの持ち方も考え直す必要が出てくる。

・ユニオンが労働組合としての集団を形成,維持していくために,とくに工夫すべき点。
1.宣伝の方法…Webからの情報の発信。さらに内容を豊かにしていく。

2.コミュニケーションの方法ユニオンSNS →補足として後述の検討。従来の企業別組合のようなコミュニケーション方法でうまくいくのか。20人の組合員が,企業別組合で1つの職場にいる場合と,ユニオンで20の職場にいる場合の相違を考える必要がある。散在する組合員の結集軸が,月に1回の支部Mだけで十分だろうか

3.活性化の方法…顔を合わせる交流の場の設定。ネットワーク上のコミュニケーションを構成しても,オフ会などが重要。ボランティア活動や,公益的な運動など,多面的な運動の魅力も求められる。

4.出版情報という共通性の中で,さらにくくるべき小集団(支部)を豊かにする課題
   現在……地域支部のほかに,管理職,派遣,取次の各支部。
   検討中…教科書,教材,家庭書など,小共闘関連の支部。
         これらは,職能別の支部とも位置づけることができるが,今は検討中の課題。
   さらに…将来は,職能支部地域支部の両輪へもっていくのがベストではないか。
(4) 出版労連は,「ロングテール」の最後尾に位置するユニオンに,何を期待できるのか?

・出版労連は,「ロングテール」の最後尾のユニオンから,何を得ることができるのか?
 1.一人一人の組合員が自主的,自発的に取り組む運動。
      ↑組織として,経営から組合事務所やチェックオフを勝ち取る運動ではない。
 2.労連の「ロングテール」に連なるはるかに長大で個別化された未組織労働者への働きかけ。
      ↑範囲を限定せず,広範囲に未組織労働者に助け合いと団結を訴えていく取り組み。
 3.企業別組合の要求闘争ではなく,個人加盟組合の社会的な運動が少しずつ前進すること。
      ↑社会的運動とは,上記(3)@58.のこと。
(5) これからの個人加盟ユニオン

・今後の出版労連に本当に必要なのは,150の職場に影響力を与えうるユニオンの存在である。たとえ,各職場の組合員数は少なくとも…。

・さらに言えば,労連の「ロングテール」に連なる,はるかに長大で個別化された未組織労働者(労働組合のない,低労働条件の職場)に働きかけていくことが求められており,それができるのは,ユニオンしかない。企業内の要求闘争に終始して,その結果も社会的に明らかにできない企業別労働組合に,こうした課題に関して,何か期待できるだろうか。

・不安定雇用,中小零細企業,下請け編集プロダクションなどの労働者,半失業者こそが,本当に労働組合を必要としているのであって,今後こうした層がユニオンの中心メンバーになるだろう。反対からいえば,ユニオンの組織拡大のためには,こういう層に対してとくにアプローチしていく必要があるし,こういう層からリーダーを育てていくことが求められている。

・例えは悪いが,1947〜49年生まれの「団塊」世代向けだけの政治をしていては,この国は滅びる。1年単位での人数は団塊世代の半分しかいない現在の10歳以下の世代を考えた政治をしなくては,日本の将来がないのと同じこと。

・ユニオンの組織化は,「ロングテールのさらなるロング化」であり,これまでにない状況を生み出すだろう。既に,執行委員ML,全組合員MLなどの手軽で,スピーディで,ローコストのコミュニケーション手段を駆使する一方,郵便によるスト権投票,機関誌などの配布物の個別郵送など,企業別単組にない手間とコストのかかる運営方法を余儀なくされてきている。

・今後,「ロングテールのさらなるロング化」にともない,これまでの企業別組合の運営では経験したことのない別の困難が出てくるだろうし,一段の工夫と議論が必要となるだろう。


[補足] ユニオンSNSについて

SNSとは,ソーシャル・ネットワーキング・サービスのこと。できるだけ多くの組合員の状況の把握,情報の収集,意見の交換などをすすめるため,どう利用できるのかなど,検討の価値があるのではないか。

・現在Webでは,Google を筆頭にして新しい流れが強まっており,それを総称して「Web 2.0」とよんでいる。その定義は曖昧で多岐にわたっているが,一つは,ブログから始まった「コミュニケーション機能の拡大」にある。従来の情報発信タイプのWebから,ブログ,SNS,さらに最新の所では,Twitterなど,コミュニケーションサービスが多彩になっている。

・ユニオンの情報は,Webや機関誌Leapを通じて発信されているが,それらは,どちらかというと,Web管理者や編集者が組合員に向けて情報を発信する形のもの。これに対して,SNSとは,組合員だけに公開されたネットワーク上のスペースで,相互に,内部のコミュニケーションを積み上げていくことができる。各組合員ごとの書き込みスペースがあり,ブログ風,プロフィール,意見などを発表し交流できる。パソコンだけでなく携帯からも利用できる。「見たよ」程度でもよい返信のシステムをもち,任意のときに投票できるアンケートシステムも考えられる(例えば「トークインの開催を希望するか」とか,「ユニオンに希望するレクリエーションは何か」など)。また,携帯をはじめとする若い人の感性にあったコミュニケーション手段も取り入れていってはどうかという観点もある。

Written by
   京都の飛んでる二人組こと
   出版情報関連ユニオン京都支部
   支部長 吉田明生,事務局長 水野恒和
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