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2002年春闘の賃上げ要求の議論のために

[2001年春闘要求討議で,文英堂労組が年齢給体系の要求に賛成できなかった背景と理由]
(教材共闘の「賃金プロジェクト」への報告より)

【1. 経済,社会情勢と職場への反映】
 日本経済の低迷が既に10年にもなり,出版界も深刻な不況にみまわれていますが,改善,回復の方向性は見えていません。さらに,教材・学参業界では少子化による市場の縮小も,確実にすすんでいます。
 そうした情勢の下で,年齢とともに賃金が上がっていく年齢給賃金体系が将来とも維持できるかどうか,現行の体系の年齢間格差(概ね,1歳につき7000~10000円くらいか?)がいつまで維持できるのかどうか,こういった疑問が職場にうまれています。
 経営状況から見て,それらが維持できなくなったとき,労働組合は,どう対応したらよいか,「先進的」な組合ほど,苦悩しているのが現状です。

【2. 賃金についての若年層の思い】
 年齢給では,若い人ほど,賃金がかなり低く,賃上げ率も低い。年齢給の定昇が維持できなくなった場合に,若い人の中に,「自分たちの賃金はそのまま低位で固定化されるのではないか」,「自分たちの賃金は何故,先輩の賃金に追いつけないのか」,「パソコンなどの技能面では先輩よりも習熟して能率の高い仕事をしていても,賃金は年齢だけに比例するものなのか」,そういった思いがでてくるは,当然といえます。

【3. 年齢給を擁護する中高年層の声】
 さきの労連大会で三一書房の代議員が,年齢給を擁護して,「若い人もいずれ中高年になるのだから」と発言していました。しかし,「若い人も,いずれ中高年になったときには,今の先輩達が受け取っているような賃金がでるはずだから,それまでの辛抱」というのは,なだらかにしろ経済成長が続き,市場も順調に拡大し,会社もそれなりに発展し続けているような状況では,説得力がありますが,現在は,そんな状況ではありません。

【4. 年齢給に対する労働組合の姿勢】
 今の中高年の労働組合員は,若いときには低賃金で辛抱してきたのは確かです。そのため,現在では,若い人よりもかなり高い賃金でも,それが当然であるとの意識を持っていて,不思議ではありません。やっとその「成果」を享受できるような中高年になったとたん,団交などで経営側から,中高年は賃金が高すぎると言われるのは,心外であると強く反発するのは,よく理解できます。
 しかし,そうした労使間のやりとりは,若い非組合員には,労働組合が,若年層や全体の賃金体系については黙ったまま,中高年組合員の既得権益擁護のためにだけ動いていると,見えることがあります。若い人が組合に加入せず,組合員の高齢化が進んでいる職場では,とくに注意しなければならないのではないでしょうか。

【5. 財界の戦略との関係】
 若年層が,財界の言う成果主義賃金にすいよせられているのは,事実でしょう。誰でも,「自分の賃金の上がる賃金体系がいちばんよい賃金体系」であることは変わりないからです。年齢給体系の下で,中高年もふくめて,全体の賃金を上げることが,若い自分の賃金も上げ,将来も約束するものであるという,ボクたちの若い頃の信念が,今も,そのまま通用する経済,社会情勢なら,何の問題もないのですが,そうなっていないところに,財界の方が戦略的に対応しています。
 その上に,自分の職場では,労働組合の「中高年層の既得権益のために闘う」姿勢を見れば,成果主義の方がよいように見えてしまうでしょう。
 さらにその上に,経営者の悪意のある宣伝が入っていけば,自分の賃金や賃上げにとって,労働組合のやっている「春闘」など,何の関心もなくなってしまいます。

【6. 労働組合の基本的な対応】
 労働組合として今,力点を置かなければならないのは,「生活のための大幅賃上げ」でなく,「若い人もふくめた全体の賃金,賃上げは,どういう方式が公正なのか」という,今の経済,社会情勢に見合った問題提起ではないでしょうか。
 労働組合がいつまでも年齢給にしがみついて,その体系下での大幅賃上げを言うだけならば,若年層が,財界の21世紀戦略に呼応していくのを,断ち切ることはできないのではないか。
 
【7. 労働組合のとるうる具体的な方向】
 方向としては,2点あると思います。
 第1点は,若い人の賃金を中高年の人と同じような生活ができるレベルにまで,大幅に引き上げることです。これは,年齢給の下での大幅賃上げとは,異なるものです。
 第2点は,中高年の賃金を,年齢給のような高い伸びにしないことです。賃金が,仕事の習熟や内容と全く関係がなく,年齢だけで決まっていくような体系が,もっとも公正と言えるでしょうか。年齢が49歳から50歳になるだけで,10000円近く賃金が上がるという体系では,仕事の習熟や内容は,どうなっているのか,という職場からの疑問に答えきれないのではないでしょうか。

【8. 春闘要求はどうしたらよいか?】
 上にあげたような方向は,すぐに実現できることではありません。しかし,賃金と賃上げの公正さは,どのようにして確保されるのか,労働組合として職場に投げかけていくような「春闘要求」をつくりたいものです。
 査定を肯定しているわけではありません。年齢給を唱えているだけでは,職場の中で,労働組合の支持者を無くしてしまいそうなのです。毎日の仕事と賃金との関係について,現在の情勢の下での労働組合の見方をはっきり提起すべきときになってきました。文英堂の中だけの話ではないと思います。社会的にもそうなっていると思います。

【9. 2001春闘要求について】
 以上のような観点で,現状の春闘要求は,教材共闘の到達した年齢給の体系表ではよくないと判断しました。教材共闘の到達した年齢給の体系表は,これまでの闘いの成果としては,素晴らしいと思いますが,それが,これから先の賃金の姿としてもふさわしいかどうかは,議論の余地があると思います。
 また,賃上げ要求額が世間の相場からあまりかけ離れるのは,非組合員の支持を得るのが困難となり,経営の悪宣伝をまねきやすいといった点で,賛成しかねます。
 で,春闘要求としては,若年層の賃金底上げをおこない,中高年とのと格差が広がらないように配慮し,春闘に関心を集めていくためには,当面,年齢にかかわらず,「一律いくら」で要求する形が,いちばんベターだと思われました。


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